일본서적/お金の要らない国 돈이 필요 없는 나라 (16) 썸네일형 리스트형 お金の要らない国(57 58 59p) またたく間に月日が経ち、私は順調に仕事を続けていった。 この社会の生活にもすっかり慣れ、知り合いもたくさんできた。皆、裏表がなく、心底、安心して付き合える人たちだった。全く快適としかいいようがなかった。私の心からも、いつしか、お金や地位に対する執着心が消えていた。重い荷物をかなぐりに捨てたように、てても楽な気持ちになった。 私は久しぶりに紳士に会った。 紳士は相変わらずほほえみながら、私に言った。 「お元気そうですね。いかがですか、お仕事のほうは」 「こんなに充実感を覚えたことはありません。自分のできる限りのことをやらせてもらっています。 社会の役に建てることが嬉しくて仕方がないんです」 紳士はにこにこしながら深くうなずいた。 「こんなに素晴らしいところがあったなんて、ちっとも知りませんでした。私の国の人にも、是非、教えてあげたいと思います。一体どこなんですか、ここは」 紳士は一瞬、困.. お金の要らない国(54 55 56p) 「いや、いつもはもう少し話し合いますね。でも、今日はあんなもんでしょう。企画にだいぶ差がありましたよ」 案を考えた私自身が、それほど差がないと思っていたので、 この返事は意外だった。 「みな、自分の案に決めたいとはおもわないんでしょうか」 「そりゃ、いい案が出せればね。でも、ほかにもっといい案が出ているんだったら、そっちに決めたほうがいいでしょう。クライアントのためですから」 私はなるほどと思った。この国の人たちの仕事は、あくまで世のため人のためなのだ。自分の利益のことなど、まるで考えていないし、考える必要もないのだ。私は別の質問をしてみた。「クライアントが案を決定するんではないんですね」 彼は私の顔を見て、不思議そうに言った。 「素人に決めさせるのは酷でしょう。案を決めるのも代理店の仕事のうちですよ」 私は、彼があまり当然のように言うので、ちょっと驚いてしまった。 「でも、失敗したら.. お金の要らない国(53p) 一通りの説明が終わると、クライアントのうちの一人が言った。 「どうもありがとうございました。各案ともとても素晴らしかったと思います。 では今から、どの案にするか三社でお話合いください」 私は耳を疑った。私たちに選べと言うのか。それも競合三社が話し合って......。 私の国ではプレゼンが終われば代理店は帰り、案の決定はクライアントが行うのが常だ。しかし、私の驚きをよそに、競合三社は、さっさと話し合いを開始した。 さぞ、みな自分の会社の案を推して、話し合いは難航するだろうと思ったのだが、これが全く予想に反し、満場一致で私の会社の案にあっさりときまってしまった。クライアントも、とても嬉しそうに皆にこにこしてうなずいていた。 帰りのクルマの中で、私は例の彼に聞いた。「いつもあんな簡単に決まっちゃうんですか?」 お金の要らない国(52p) 「それはあなたの国でも同じでしょう。広告はエンターテインメントを 求められるんですよ。つまらないよりは面白いほうがいいんではないですか?」 ついに、プレゼンテーションの日がきた。私の会社の案は、私が中心になって 企画したもので、我ながらよくできたと思っていたし、皆も賛同してくれたので 自信があった。クライアントに着くと、前より広い会議室に通された。 そこで私はおや?と思った。他の二社がきていたのだ。私の国では普通、 代理店はプレゼンを順番に、時間をずらしてクライアントに呼ばれる。 そうしないと待ち時間が長くなってしまうからだ。不思議に思って聞いてみると、 なんとこの国ではプレゼンは、他代理店立ち合いのもと、合同で行われるとのことだった。 私の緊張は高まった。 いよいよプレゼンテーションが始まった。三社が順番に大きな画面に、 用意してきた案を映し出し、企画意図の説明をした。他の二社の案も.. お金の要らない国(51p) 「コマーシャルをしても、皆すぐには品物を手に入れようとせず、 メーカーもそれで困るわけではないのに、なぜ広告する必要があるんでしょうね」 彼は言った。 「いや、すぐに手に入れたい人だっていますよ。新しくその品物が必要になった人とか、 取り替え時期に当たる人は必ずいるわけですから。また、すぐには手に入れないにしても、 皆いずれは使うことになるんですから、その製品の知識を与えておく必要はあるでしょう。 それに、メーカーも、いざという時に自分の会社の品物を選んでもらえないと、その会社の 仕事自体が世間の役に立っていないことになり、存在価値がなくなってしまいます。まあ、 無理に自社のものを押し付けるような人はいませんし、必要のないものしかつくれない会社は 今までにもずいぶん消えていきました。でも、それで誰も困るわけではないし、残った会社は いいライバル関係になって技術をどんどん向上させています.. お金の要らない国(49p 50p) 彼と話していてわかったことなのだが、この国では、新製品というのは滅多に 出ないらしい。デザインにしても機能にしても、すべてのものがほぼ完璧なところまで 来ているので、改良の余地がほとんどなく、定番品を生産していれば十分にこと足りてしまうようだ。 また、この国の人たちは、ちょっと目先を変えたくらいでは取り替えても大差ないことが分かっているので、 新製品を出すなら格段の改良が必要になるのだそうだ。それに、今回の新製品にしても広告したからといって、 すぐに手に入れようとする人は少ないだろうという。皆、ものはできる限り大切に、大抵は壊れるまで使う。 そして、取り替える時点で最新式のものにするのだそうだ。 この国の人たちの仕事の目的はあくまで奉仕であって、報酬ではない。だから不必要な仕事はできるだけ 作らないようにしている。自分がぜいたくをすると、誰かがしなくてはならない仕事を増やし、また貴重な.. お金の要らない国(47p 48p) 「本日は、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。この度、 私どもの会社の研究開発部門で長い間研究を続けてまいりました新製品が、ついに 完成いたしました。つきましては、その広告をどのように展開していったらよいか、 皆様のお知恵をお借りしたいと思いますので、よろしくお願いいたします」 その新製品とは、あの立体テレビの新型だった。私は、デザインでもちょっと変えたのかなくらいに 思ったのだが、実物を見せてもらって仰天した。私のうちにあるのだって十分すぎるくらいに すごいのに、これはまたとんでもない。もう、映像ではなく、実物がそこにあるとしか思えないのだ。 思わず私は手を伸ばして画面に触ってしまった。もちろん、手は入っては行かなかったが、まさに 向こうの世界との間に、透明なバリアーがあるだけという感じなのだ。びっくりしている私たちに、 クライアントの二人は詳しく新製品の説明をし.. お金の要らない国(45p 46p) あくる日、私は紳士が紹介してくれた広告代理店へ行った。 応接室に通されると間もなく、二十七、八歳の、いかにも頭のきれそうな、 黒人のキャリアウーマンが入ってきた。彼女は美しく知的な顔を私に向け、 にっこり笑って言った。 「ようこそ。私は人事担当の者です」 しばらく彼女と話しているうちに、私はいきなり翌日、 あるクライアントにオリエンテーションを 受けに行くことになってしまった。広告制作の未経験者には、 新人養成のセンターもあるようなのだが、 私の場合は私の国での経験があるので、 とりあえずやらせてみようと彼女は思ったらしい。 彼女一人の判断でそこまで決めてしまえるのは驚きだったが、 本当に信頼関係で成り立っている世界なのだなあと私は思った。 もちろん、コマーシャルの制作にたずさわるのは私一人ではないし、 オリエンも、他の部署の人と一緒に行くのだが、久しぶりの仕事に私は うずうずした。お.. 이전 1 2 다음