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あくる日、私は紳士が紹介してくれた広告代理店へ行った。
応接室に通されると間もなく、二十七、八歳の、いかにも頭のきれそうな、
黒人のキャリアウーマンが入ってきた。彼女は美しく知的な顔を私に向け、
にっこり笑って言った。
「ようこそ。私は人事担当の者です」
しばらく彼女と話しているうちに、私はいきなり翌日、
あるクライアントにオリエンテーションを
受けに行くことになってしまった。広告制作の未経験者には、
新人養成のセンターもあるようなのだが、
私の場合は私の国での経験があるので、
とりあえずやらせてみようと彼女は思ったらしい。
彼女一人の判断でそこまで決めてしまえるのは驚きだったが、
本当に信頼関係で成り立っている世界なのだなあと私は思った。
もちろん、コマーシャルの制作にたずさわるのは私一人ではないし、
オリエンも、他の部署の人と一緒に行くのだが、久しぶりの仕事に私は
うずうずした。お金がからまないというのも、とても気持ちよかった。
翌日、私たちは数人で、クライアントの会社のビルへ行くと、宣伝部の
会議室に通された。すでに、私たちの前にほかの広告代理店らしき数人の
グループが二組来ていた。ははあ、この仕事は競合なのだなと思うと、
私は少し緊張した。しかし、一緒に行った私の仲間はその人たちと親しそうに
挨拶を交わし、屈託なく自分の会社のことなどを話し始めた。私の国では、
競合相手とはあまり口をきかないことが多いので、私は驚いた。
しばらくすると会議室に、クライアントらしき二人が入ってきた。一人は明るい色の
スーツを着た四十歳くらいのアジア系の女性、もう一人はラフな格好の三十歳くらいの
白人男性で、二人はテーブルをはさんで私たちと向かい合うように座った。女性が口を開いた。
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