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「本日は、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。この度、
私どもの会社の研究開発部門で長い間研究を続けてまいりました新製品が、ついに
完成いたしました。つきましては、その広告をどのように展開していったらよいか、
皆様のお知恵をお借りしたいと思いますので、よろしくお願いいたします」
その新製品とは、あの立体テレビの新型だった。私は、デザインでもちょっと変えたのかなくらいに
思ったのだが、実物を見せてもらって仰天した。私のうちにあるのだって十分すぎるくらいに
すごいのに、これはまたとんでもない。もう、映像ではなく、実物がそこにあるとしか思えないのだ。
思わず私は手を伸ばして画面に触ってしまった。もちろん、手は入っては行かなかったが、まさに
向こうの世界との間に、透明なバリアーがあるだけという感じなのだ。びっくりしている私たちに、
クライアントの二人は詳しく新製品の説明をしてくれた。私は、これは広告したらみんなが
飛びつくなと思った。
帰りのクルマの中で、私は隣に座っている同僚に話しかけた。
「クライアントにしては、ずいぶん丁寧な人たちでしたね」
彼は不思議そうに言った。
「そうですか?あんなもんだと思いますけど」
ちょっと意外なっ答えだったので、私はとまどった。
「私の国ではお得意さんは、やっぱり何となく威張っていますよ。仕事を出すんですから」
彼は驚いたように言った。
「へえ、ものを頼む人のほうが威張っているなんて、おかしな国ですねえ」
私は一瞬、言葉を失ったが、少し考えてすぐ納得した。お金というものがないだけで、
こうも常識が変わるものかと思うと、なんだかおかしくなって笑い出してしまった。
隣で彼も、にこにこしていた。
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